サイエンスコミュニケーションにおけるアート:なぜアート?

その問いへの回答の一つとして、私たちは現代アート(以下,アート)というに着目した。現代アートといってもその定義は多様ではあるが、本書で扱う現代アートとは、今日的課題を取り扱い、同時代のメディアをも活用し表現された作品群、そしてその活動と定義する。

科学技術とアートをつなぐ、アートで科学を伝える、その言葉の響きはワクワクするし、とても先端的に感じられる。

一方で、アートには純然たる鑑賞のルールがあり、特に現代アートは鑑賞し解釈することが難解であるといわれている。また、アートにはあいちトリエンナーレ2019での表現の不自由展のように、強い反発を生むきっかけもはらんでいる。

なぜ、あえて、アートなのか。本書では、アートとサイエンスコミュニケーションの活動を組み合わせることは、印象論を超えて、どのような意義があり、課題があり、可能性があるのかを、できるだけ実践からの気づき、理論、データを通して語ろうと試みた。本書には私たちが10年間かけて行った、アーティスト、アート作品、そしてアートが生み出したコミュニケーションの枠組みを活用したサイエンスコミュニケーションに教育と実践を紹介している。サイエンスコミュニケーションにおけるアートが、科学コミュニケーションにおいてあだ花的な扱いに終始することがないように、アートというものがサイエンスコミュニケーションにおける重要な研究トピックであるという認識が読者と共有できることが、本書の真の狙いである。