​解体する科学

サイエンスコミュニケーションの問

科学技術をテーマに、知識、関心、立場が異なる人々が対話、相互理解、合意形成といったコミュニケーションを成り立たせる活動が​サイエンスコミュニケーションです。

難しい科学や最先端の技術を分かりやすく魅力的に伝える活動、それは​サイエンスコミュニケーションの重要な目的の一つです。そもそも科学分野にまつわる専門的な知識は、専門的な分野内のトレーニングで時間をかけて獲得されます。そのため、先端的な科学の情報はどうしてもごく一部の専門家しか理解できない分野となってしまいます。一度、科学を学ぶことをやめてしまうと、全く未知の世界になってしまう…、なんてことがないように、専門教育の枠を飛び出して科学を伝えることは、​サイエンスコミュニケーションを行う意義の一つです。

もう一つ、​サイエンスコミュニケーションには大切な役割があります。それは私たちの社会はどんな科学技術を選択するのかについてみんなで考えるという機会を設けることです。全員が納得する形での合議というのは難しいのかもしれないが、それでもなるべく多くのステークホルダーを巻き込んでいく、一方的な決定ではなく協調的な対話の在り方を探っていくためには、知識の普及だけでなく、関心や信頼を高めるといった観点からのアプローチも重要になってきます。

​サイエンスコミュニケーションを研究する場合、普段、接点のない世界の入り口を作ったり、普段交わらない人々の出会いをどう生み出していくの、というところから考えていきます。これは意外に難しい「問い」です。オンライン上のソーシャルネットワークサービスが発展したことにより、我々の世界は以前よりもっと自分の好きなもの、似た考えの人と出会うことが容易になっている一方、自分の興味のないもの、考えや背景が違う人と出会い、そこにコミュニケーションコストを払っていくのは、好きなものを超える以上のパワーで巻き込まないといけません。そんなパワーをどのように生み出し、仕掛けることができるのか、サイエンスコミュニケーションとは、そのような「問い」に向き合い、仕掛けを実践し、評価していく活動です。

なぜアートを用いてサイエンスコミュニケーションを行うのか

何かを伝える媒体、それをメディアと言います。アートをメディアと呼ぶ には、その表現はあまりに遠回りで、解釈には多様性が認められています。その為、伝えたいメッセージが伝わらない場合もあります。

  

しかし伝わることだけがコミュニケーションなのでしょうか。 私たちが理解させようという態度で臨む限り、理解できないこ とは失敗になります。私たちが相手の考えを変えようという姿勢で臨む限り、 相手の考えが違うことは問題になります。そして、いつしかその不寛容なコ ミュニケーションは科学技術自体の首を絞めるでしょう。科学技術側も間違えることはあるし、社会的常識から逸脱することもあるのです。

 

アートを通して行うサイエンスコミュニケーションは違う意見の人がいても面白い、分からない世界があっても楽しいという、違和感を楽しむコミュニケーション への転換を目指しています。同じものを見ていても、私たちが同じことを感じるわけではないということを、アートを通じて学び合うことを目指しています。

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