博物館学ゼミの論文紹介

博物館学に興味を持つ学生と共に博物館学ゼミを毎週木曜日10時から開いています。


前回は、博物館に関係する論文を学生が紹介してくれました。それぞれ面白かったので、ご紹介。


大学院生のMさんが紹介してくれた論文。


松本 朱実, 馬場 敦義, 森本 信也, 

動物園における小学校の理科教育との連携の試み, 

理科教育学研究, 2015, 56 巻, 1 号, p. 59-74


近年、博物館研究でも主流の一つである対話分析。本論文は、教師と児童との対話の分析をカテゴリー分析を通して、博物館来館経験を経るごとに広がる概念理解の発達を明らかにしています。カテゴリー分析の参考論文としても非常に優れています。また、分析を補強するものとして使われている事前事後のワークシートの結果がすごい。子どもがここまで詳細に気づくことができるのか!ってくらいレベルが高いものになっています。今後、対話だけでなく、体験の際に学習資源となるワークシートもまた質的な分析材料としてどう利用できるのかについて示唆する論文です。


次に研究生のLさんが紹介してくれた論文。


Van Schijndel,t.J.P, Franse, R.K, Ra jimakers, M.E.J

The Exploratory Behavior Scale: Assessing young visitors' hands‐on behavior in science museums

Science Education Volume 94, Issue 5


こちら、博物館での子供の体験、特にハンズオン展示のかかわりをルーブリック評価しようという試み。3段階で体験型の展示の子供の反応を評価しています。


1. Passive contact 受動的関わり

A child walks, stands, sits or leans on something and may hold or transport an object. However, the child does not manipulate the object in an active and attentive manner. 

子どもが歩いたり、立ったり、座ったり、何かにもたれかかっていて、展示物を握ったり移動させたりしている。しかし、子供たちはその展示物を積極的に、もしくは注意深く操作していない。


2. Active manipulation 積極的関わり

A child manipulates an object in an active and attentive manner. This implies that the child pays attention to his or her action(s) and the outcome(s) of the action(s). 

子どもは積極的に、注意深く展示物を操作している。子供たちは自分の行動や行動結果に注意を払っている。


3. Exploratory behavior 探索的行動

A child manipulates an object in an active and attentive manner (as Active manipulation). In addition, the child applies repetition and variation to his or her actions. “Repetition” implies that the child repeats an action (several times). “Variation” implies that the child performs different actions with one object or performs the same action with different objects. Actions that clearly differ in degree are also considered different actions.

子どもは積極的に、注意深く展示物を操作している(積極的関わり)。さらに子供は自分の活動に繰り返し、ヴァリエーションを加えていく。「繰り返し」は子供が何度も行動を繰り返すことである。「ヴァリエーション」は子供が一つの展示に対して様々な活動を行ったり、複数の展示物に同じ行動を試してみたりすることである。明らかに質が異なる活動は異なる活動であると見なされる。


この分類で、子供たちの活動を量的に分析し、じつは簡易な展示物であったら子供の力のみでレベル3の探索行動まで行きつくし、実はガイドの力はあまり訳立たない。ただ複雑な展示の場合はガイドの指示が必要、など展示評価にも使われています。

また親の声掛けの効果なども評価されています。EBSというこのスケールは興味深いということで、Lさんの研究にも使ってみようということになりました。


最後は研究生のSさんが紹介してくれた学会発表原稿。


Hornecker, Eva & Stifter, Matthias. (2006). Learning from interactive museum installations about interaction design for public settings. 135-142. 10.1145/1228175.1228201.


滞在時間が長い展示と人がとどまる展示の違いなど、来館者の展示前の行動の分析によって分析しています。立ち止まる頻度と滞在時間の計測という若干単純な評価ですが、質的に違う展示全体を包括的に評価する際には実践的な手法だと思います。こちら、smart cardという来館者が事前に購入して自分の展示行動を記録できるデータを用いています。オーディオガイドのログなどでもできそうな評価方法ですね。うまく評価と来館者の来館学習体験教材が連動できれば、という可能性を感じる論文です。


私も自分の興味のある論文ばかり読んでしまうので、こんな風に学生と一緒に論文読むの楽しいなと思いました。

© 2016 Museology Lab

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