研究会の合間に気合いだけで札幌国際芸術祭をちょこっと見てきました!
モエレ沼も芸術の森も行けてないんで断片的ですが…
今回、私が行ったのは、札幌駅から大通駅までの地下道(チカホ)と、
大通駅からバスセンター前駅の地下道500メートル美術館、赤レンガ庁舎、
北海道立近代美術館です。
今回は歩きながら廻った二つの地下道の作品を紹介します。

あまり話題になっていないなどの指摘もあるようですが、
場所性をちゃんと考えられた丁寧な作品が多く、
とても好感が持てる芸術祭でした。
チカホはセンシングストリームズというテーマでセンシング機能を持った作品が展示してありました。

菅野創/yang02『セミセンスレス・ドローイング・モジュールズ(SDM)』
これは、行き交う人の足音や湿気などを感知して、ペンが上下左右に動き、自動で絵を描く作品です。
ギーク受けしそうなコンセプトだけでなく、普通のボールペンで微細に刻まれる線の軌跡はとても美しいです。
方眼紙に細かに描かれる科学のグラフに似ているかもしれません。
意図的ではない人工的なものは、清潔感が溢れます。

これは毛利悠子『サーカスの地中』です。
方位磁石の針の揺れを感知すると電気が流れ、小さなオブジェがぴょこんっと動く作品。
ハタキのようなオブジェなんですが、意外にかわいく、毛があることにより生物感が増すんだ…って生物らしさに対する自分の定義を再確認しました。
チカホのテーマは国際性です。
私が心に残ったのはA.P.I.の活動?「フェニックス:極地圏」です。
Web上のリソースを使って発信、保存する活動をしている、A.P.I.。
Webページはこちら。
システムはまだ作られてないみたいですが、様々な共同体、言語(あくまでも、国家ではない)が極地圏に存在することを図解した地図や旗を見るだけでも興味深いです。

同じ国に括られているけど、全く異なる生活がそこにはあり、
しかも結構外れ値にいる地域の文化への気づきが促されています。
さて、次の500メートル美術館は北海道の過去に焦点をあてた作品が並びます。
時の座標軸というテーマにちなんでノスタルジックな作品が並びます。

上遠野敏『20世紀の肖像(炭鉱の歴史)』はかつて炭鉱で栄えていた時期の様子を
炭鉱博物館からかりてきたちょっとレトロな資料と、
作者が作ったキッチュな木や動物のオブジェで表現します。
かつてのエネルギーを肯定的に振り返るようなネアカな表現になっています。
ちょっと前に、薄型テレビ用の民芸品、
薄型民芸ってはやりましたが、オブジェの雰囲気はまさにそれです。

天然資源に頼って経済振興してた時期って、多分底抜けの明るさと、
刹那的な経済活動があったんだろうなと予想されます。
本作は過去をシリアスに表現していないところが、ミソなんだと思います。

HIDEMI NISHIDA『scan_01_5.jul.2014_fin』はかつて石炭の輸出に使われていた、
旧手宮線の始発地点の付近を一枚一枚スキャナで読み取った作品です。
写真よりもべたっとしていて、焦点が合いづらいため、
雑草の中にある線路がなかなか見つけられません。
こうやって北海道は最後には自然に帰っていくのでしょうか?

高田洋三『In Our Nature』は自然と人工との不均等をシニカルに表現します。
ここでは、アリゾナ砂漠にある生態系を研究する科学施設と
ニューヨーク、マンハッタンという高密度な人工空間を実現した摩天楼都市の写真を上下に並べ、
対比しています。
作られた自然の中でしか生きられない生態系、
そして我々はそんな人工的自然のみしか目にしない環境で、
囲まれて育っているのかもしれません。

最後にこれは体験型の作品です。
今村育子『向こうの光』
ケースの中に入ると、人の往来によって隙間から漏れる光に変化がうまれます。
セミセンスレス・ドローイング・モジュールズがデジタルを使った気配の感知であれば、
こちらはとてもアナログな手法で気配を感じることができる作品になっています。
国際的、歴史的という二つの視点から辿る北海道という地域は、
改めて本土とは違う空気が流れているような気がしました。
安全なようで不安、さびれているようで栄えている、
整然としているようで複雑な町の顔が歩くたびに伝わってくる、
そんな二つの地下道の展示でした。