あの手、この手で、自館のコレクションをキュレーションしていく、コレクション展。
特別展より、ある意味、美術館の力量が伝わる展示です。
さて、北海道立近代美術館のCATCH THE COLORSと題されたコレクション展。
(展示期間はなんと11月から4月まで…、長い!でも、頻繁な展示替えで疲弊するぐらいなら、いいと思う。)
構成はいたってシンプル。色とそれにまつわる作品が展示されています。
それだけなんですが、とても味わい深い展示になっています。
例えば、鳥の子色。
なんてかわいい名前!鳥の子色は鳥の卵の殻の色らしく、平安時代ごろからあるそうです。
作品は小谷博貞の【春卵】、くすんだピンクのメルヘンチックだし、鳥の子色使ってないけど(あれ?)、鳥の子色って感じ。色の下に書いてあるCMYKに捉われていない作品も多数、でも色は感じる心だもんね!
またこちらは浮世絵の展示。
江戸時代、茶色や鼠色を混ぜ、渋い色味にすることがはやったらしく、「○○茶」「○○鼠」と呼ばれるくすんだ色名が数多く生まれたそうです。四十八茶百鼠というのはそのような色全体の総称とのこと。
浮世絵に使われている、渋めの色はあえて渋く抑えてあるのね、江戸時代、おしゃれ!
こちら、冬の函館の明るいグレー、「フォッグ」で描いた、中山爾郎の【海霧―ガス―】。
北欧ぽい。北国の明るさは寒色でできていて、凛々しいです。
第2章の色をつかまえろ!では、しみこむや、ゆらぐ、といった色の形態で作品を紹介しています。
ポスターには杉山留美子の他の抽象画が使われていますが、白地に微かに色が滲むこちの作品も、色の意味を問うているようでいいな。
そしてちょいちょい、学校連携事業を挟んでくる近美。
中学生に沢田哲郎の【SKY SCAPE】を見せて解説文を書かせたそうです。作品の横に嫌味なく、中学生の解説文が展示されています。
また、色を重ねたキャンバスをサンドペーパーで削って作品にする、井上まさじの作品。
の横には、丸山小学校3年生が同じ技法で制作した作品が。
どちらの事業も、鑑賞や制作の本質が無理なく学べるテーマで、褒めたい(上から目線だけど)。
さらに、成果物が展示に反映されているところも(それも自然に)、美術館の事業のさりげない紹介になっていて、いいです。
連動するイベント、ミニ・アトリエ「七色の国の王さまたち」では、100色のニット型シール森の国や雪の国などコンセプトのある王様に貼ることで、王様にセーターを着せていくというワークショップです。
シールはシールを張り終わったら、持って帰れます。
この色も小学生から高校生までの生徒たちが塗ったとのこと。
パクりたいアイディアです。
もうおなかいっぱいだよーなんですが、さらに常設展ではこんな切実に作品を推すコーナーがありました。「この1点をみてほしい。」って。
愛が、愛があふれている。今回、選ばれているのは、鹿子木孟郎【裸婦】
しかも、多角的に解説されている。解説を読むと、フランス・アカデミズムにこだわって、ほかの西洋画をディスりまくった、ちょっと融通の利かないというエピソードが...あれ、愛は?
もう、コレクション展だけでも大満足。
なのに、ついでに片岡球子、見ていきませんか?と誘ってくる近代美術館。(帰らせて!)
食わず嫌いせずに見たら、こちらも超良かった。
かつて、ゲテモノ扱いされた、片岡球子。そりゃそうでしょう。日本画に油性マジック使ってるんだから。
でも、その油性マジックは、線の強さを切実に求めた結果であるということが、本人のスケッチブックを組み合わせた展示によって伝わる構成になっています。
研究と勉強を重ねた末の邪道。しびれる。