Resonance


Resonance

研究者とアーティストが共に語り合いながら作品を制作するサイエンス&アートプロジェクトです。




【目的】

Resonanceプロジェクトとは、研究者の文化を発信するために、研究者だけでは気付かない研究者の文化的背景を、芸術家が市民の視点から研究者と対話することにより明らかにしていき、その後芸術家が、研究者の価値観や視点を作品という形で可視化し、社会に発信する、という活動です。

サイエンスコミュニケーションとは、「科学というものの文化や知識が、より大きいコミュニティの文化の中に吸収されていく過程」(ストックルマイヤー 2003)であり、研究を社会に発信する際、研究データだけを発信するのではなく、研究者の価値観や視点といった文化的背景を含めて社会に発信する必要があります。 一方、芸術の真の機能は感情を表現し、理解を伝えることです(リード 1966) 。

Resonanceプロジェクトでは、科学の持っている文化的価値を、芸術家の手法によって、表現し、社会に理解を伝達することを目指しています。


平成22~23年度は6名の研究者と10名のアーティストが組んで、作品を制作しました。

研究者との対話の中で、芸術家は、研究者の活動の根底にある、人間とは何か、人生とは何か、多様性とは何か、という哲学的な問いに触発され、作品を制作していきました。



【関連論文】

科学コミュニケーションにおけるアートを用いた表現の印象・伝達効果の調査・分析

奥本 素子, 岩瀬 峰代

科学教育研究 39(4) 359 - 366 2015年12月



これまでの事例



飯田三代《遺伝子の可能性、3.11以降

颯田葉子(分子進化学)

人間のDNAの約9割はどのような役割を持っているのか、明らかになっていない。私たちの可能性はもしかすると、無限?

 作品制作途中で、3.11の震災があった。その時、自宅の庭の小松菜の発芽を見、過酷な状況の中で、生物は進化していくのかもしれないと、思った。

画面上にある生命の象徴としての新芽の背後にある球形は、遺伝子。周りを縁取る細かな球形は、言葉。



市川治之進化する私

颯田葉子(分子進化学)

芸術家は、常に考えている。人間とは何か、自分とは何か、世界とは何か…正解がない答を求めている。

科学者が、別のアプローチから同じような問いの答えを求め、活動していることを、対話の中で発見していった。

人間らしさとは、意識や知識を積み重ね、答えのない答を追い求めることではないか。積み重なったレイヤーは私の意識の層、その先に存在するのは、人間としての私。









北川純ヒトの進化

颯田葉子(分子進化学)

偶然が重なりあって、自分は生まれてきたんじゃないかと思っている。

だから、日々突然変異が起こっている中で、環境に対応した変異だけが今の人間の進化に影響を与えているっていう話は、自然に思えた。

偶然の変化の中から、たまたま選び取られた変化の兆し、それが今の人間を人間たらしめている。






胡桃澤千晶One Drops, One World

颯田葉子(分子進化学)

 突然変異は常におこる、しかし環境の中で、その変異に意味が生まれてくるという。

 小さなガラス球に2重写しになっているのは、環境と、その中で生きる生命。環境は我々を育む、一方で時に環境は我々を駆逐する、生命はそんな危うさの中で存在している。

我々は、環境との不安定で、奇妙で、だけど見事なバランスの中で生きている。





藤原裕策Parallel

颯田葉子(分子進化学)

 進化はコピーを繰り返す過程で、生まれる。生真面目な作業の中から生まれる些細な違いは、やがて大きな差異となり、人間と他の生物を分けていく。

 今回、2つ折りした紙の間に絵具を挟み、上から圧力をかけ絵具を押し潰し、偶発的に左右対称な画面を作る技法を使い、コピーするという進化の過程を絵画で表現した。

写すという作業は、同じものと違うものを同時に生み出す。



山重徹夫《断片的に切り取られた本棚:透明な集積》

阪本成一(天文学者)

夜空には、星が見えます。でも本当は星がない部分も何もないわけではないのです。その暗闇には次に生まれる星のエネルギーが存在します。 透明な水晶の粒が集まると、白い物質として見えてくるように、宇宙の暗闇(を調べると、そこには確かに何かがあるのです。


光の粒で満たされた空間 その中に影として浮き上がる文字 現象と秩序の言葉 そして一篇の詩が聞こえてきた


To see a World in a Grain of Sand And a Heaven in a Wild Flower, Hold Infinity in the Palm of your hand And Eternity in an hour.


一粒の砂に世界を見る 一輪の野の花に天国を見る 手のひらに無限を掴み ひとときの中に永遠を捉える

William Blake(1575-1827)



山重徹夫《断片的に切り取られた本棚:宇宙を読む》

阪本成一(天文学者)

遠い宇宙を見るには、小さな部分を詳しく見るか、広いところをぼんやり見るか、どちらかを選ばなければなりません。 神様に、宇宙の秘密が書かれた本をもらいました。1ページだけ読むか、それぞれ1文だけを抜き出して1冊読むか、どちらかを選びなさい、と言われた時、あなたならどちらを選びますか?

 宇宙は粒で満たされている 目に見えるもの 目に見えないもの 存在するもの しないもの 大きな図書館に集められた文字の集積 それは文章という法則に従って並んでいる 宇宙の物語に出会った少年 一冊の本を読み終えた後 その物語の先が知りたいと思った これは無数の本の断片 文字の粒 パズルのように組み合わさり 連続 断片 想像 再び一つになる。



大和由佳《氷下の静塔のために》

伊村智(生物学者) 【湖の王者】 水は生き物が生きていく上で欠かせない物質です。 南極は水分が少なく、からからと乾いています。砂漠のような南極の環境では、多くの生き物は生きてはいくことはできません。 南極で一番水分があるところ、それは南極にある湖の中です。厚い氷におおわれた湖の中には、弱い光でも生きていける苔がたくさん生えています。苔はこの小さな世界で一番強くて大きな生き物です。 僕らの世界だけが世界の全てではないのです。

 のぞき込むように鑑賞すると、中は合わせ鏡になっていて、苔をモチーフにしたオブジェは、永遠にコピーされていきます。


三原回 《Enigma》

阪本成一(天文学者)

 空には星がたくさんあります。しかし星の子どもは、まだ光が弱くって、なかなか見ることができません。星が生まれるその弱い光を、見つけようとしている天文学者がいます。 本当に見たいものは、見えそうで見えない。見えないものだからこそ、目を凝らしてみようとする。確かにあるはずの光を探して、今日も宇宙をのぞきます。 見えるものだけで世界が作られているわけではありません。見えないものの世界、見えないけどある世界。それを見たいと思うのは、わがままですか?



井上尚子《悼み・傷み・痛みの温度》

富永真琴(生理学者)

  熱いと痛い?冷たいと痛い? 熱すぎると、また冷たすぎると、僕らは痛いと感じます。だけどやけどした時は冷たい水で冷やし、風邪をひいた時は暖かい毛布にくるまります。温度で僕らは元気になります。 温度を感じる僕らの感覚、痛みを感じる僕らの感覚、切っても切り離せないその感覚と共に僕らは生きています。 熱かったり冷たかったり、痛かったり優しかったり、繰り返しながら生きています。



茂木 綾子《遠さへの衝動》

日髙薫(美術史家)

 昔は外国に行くのはとても大変でした。それでも、昔の人は外国に行って、外国人と話したり、お互いの国の物を交換したりしていました。 日本では、漆を使ったきれいなうつわや箱がたくさん作られていました。外国の人は日本の漆で作られたものを買いたいなと思いました。昔の漆の職人さん達は、外国の人に気に入ってもらえるよう、外国の人の美しいと思うものを、うつわや箱に取り入れるようになりました。 海の向こうから、美しいものはやってきて、海の向こうへ美しいものは送り出されるのです。



小山田徹 《Diversity Maniacs》

成瀬清(生物学者)

 メダカをたくさん飼っている研究者がいました。その先生はいつもメダカを見ています。ある日、先生は気が付きました。メダカにも顔つきがあるってこと。 僕らが、「めだか」と呼んでる小さな魚。だけど、メダカだって同じじゃない。 人は小さな違いに気が付かず、つい生き物を一つにくくりがち。でも、そもそも生物は多様)です。その違い)が、世界を豊かにしてくれているのです。僕らも、メダカも、違うからこそ、生きていられるのです。

© 2016 Museology Lab

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